「服屋さんでの店員の声かけ、実は万引き防止策」という言説の記事を見かけた。僕はかつて3年ほど古着屋で雇われ店長をしてた経験があり、目の前で起きた万引き事件を思い出したので書いてみる。
店員の声かけ 実は万引き防止策という記事があった。
服屋さんとかで声掛けされるの、ウザくないですか?僕はすごい嫌い。マジでほっといて欲しい。そんな僕は昔、3年ほど服屋で働いていた。
- 服屋さんでの店員の声掛けは万引き防止?
- 声掛けは喋りたいお客さんのためのきっかけづくり
- 万引き対策システム設置が難しい?!うちは簡易的なシステム導入してました
- 閉店間際にお客さんが来た
- なぜか試着室に向かうお客さん
- 全力疾走で闇夜に消えたジャケットとスウェットと万引き犯…
- パニックになりつつ試着室に入ると…
- オーナーに電話し報告した結果…
- 終わりに
服屋さんでの店員の声掛けは万引き防止?
先程の記事の中で、声掛けの機能についてこんな記述があった。
機能の1つめは、客の認識だ。(中略)認識されていないと客側が感じた場合、クレームに至るケースが実際にあるのだ。特に、高いサービスレベルを要求される百貨店など(中略)
2つめの機能は、「万引きの抑止」だ。人間は誰かに見られていると、行動が抑制されやすい。人の目が気になるという言葉どおりだ。
このビジネスモデルアナリストっていう人の意見が間違ってるかどうか、そういうことはわからない。ただ、僕が働いてた店では万引き防止のために、っていう発想はなかった。あと、声掛けしなかったからクレームになるなんてこともなかった。
僕が働いてたのはオーナーが1人でアメ村で始めた古着屋さんだったから、高いサービスレベルを要求されてなかったからか。笑
声掛けは喋りたいお客さんのためのきっかけづくり
まあそもそも、僕らのお店ではあんまり声掛けをしすぎないようにしてた。
ある程度長く滞在してるお客さんには軽く声掛けすることで
「あ、ちょっと聞きたいんですけど…」
みたいな会話のキッカケを作るつもりでやってた。(もちろん、買って欲しいっていう気持ちはある)
万引き対策システム設置が難しい?!うちは簡易的なシステム導入してました
レンタルビデオ店のように商品タグと連動する防止用システムを導入すればよいのではと思われるかもしれない。しかし、そこには簡単に導入に踏み切れない3つの理由が立ちはだかる。
1つめは、導入コストだ。全商品に取り付けるタグ、出入口に設置するセンサーなどイニシャル・コストだけでも数千万単位に迫ることが専らだ。
このアナリストの人が言ってるのはおそらくチェーン店なんかが設置してる、がっつりシステム化された物。確かにそういうのはすごくコストかかるだろう。
でも、うちの店舗はタグ型のカードを服に取り付け、入り口のゲートを通過するとピーピー鳴るシステムを導入してた。(買ってくれたらレジで切り取る)
無理に外すとインクが飛び出たりとか、そういう仕組はない簡易的なものだけど、結構抑止力にはなってた。
閉店間際にお客さんが来た
僕が店を任されてたのは2号店で、大阪郊外の倉庫を改装した店。わりと広い店だったけど、大体は僕が1人で店番しつつ、オーナーが数時間だけ滞在する感じ。
そんなお店での、ある夜の出来事。
息も白くなるような冬の時期、閉店15分前くらいにお客さん(20歳位の男性)が入ってきた。郊外店でマニアックな場所ではあったけど、ネットで発信してたのでわりと遠方からもご新規さんもくるお店。そのお客さんも見たことがないご新規さんだった。
入って数分、慣れた感じでいろいろとジャケットを試着するお客さん。結構な数を試着してるので、
「よかったらマネキンが着てるジャケットも試着出来ますんで。入荷したばっかりなんですよ」
なんて声をかけた。すると
「あ、じゃあ試着させて下さい…」
と言われ、マネキンから脱がせて渡した。
なぜか試着室に向かうお客さん
さっきまでは普通に店頭で試着してたのに、なぜかその服を持って試着室に入っていった。一瞬疑問に思ったけど、着慣れないタイプの服を試着するとき、恥ずかしくて試着室に入る人もいるから、様子をみてた。
するとしばらくして出てきた。そして
「このジャケットなら、下にはどんなの着たらいいですか?」
と聞かれ、
「このスウェットがオススメですよ」
と、マネキンの下に着せてたスウェットを渡すと、また試着室に戻った。そして試着室から出てきて、少し離れて鏡で全身をチェック。結構迷ってる様子だったので、べったりくっつくのも悪いかなと思い、すでに閉店時間は過ぎてたけど僕はレジに戻り、熟考する時間にしてもらうことにした。
全力疾走で闇夜に消えたジャケットとスウェットと万引き犯…
僕がレジに戻り、少しだけ後ろ向きになった瞬間、
走り出す音と共にバサッと音がした。振り返るとさっきのお客さんは居なくなっていた…。
うちのお店は倉庫を改装していたから、いわゆる【玄関ドア】のようなものはなく、車のガレージみたいにシャッターがあるだけ。だから開店中は常に開きっぱなしで、両脇にメタルラックで商品を並べたりしてた。このメタルラックに服が当たるバサッと言う音だった。万引き防止ゲートは鳴らなかった。
パニックになりつつ試着室に入ると…
え????っというパニック状態になった。けど
「も、もしかしたら急に電話かなんかで呼び出されて走って帰ったのかな…」
なんて思いながら試着室に戻ると…防犯タグが切り取られ捨てられていた。(手で切れるようなものじゃないけど、ハサミやカッターなら切り取れる)
試着したまま万引きされたわけだ。はじめての体験で、あまりにもショックで動揺しまくったのを今でも覚えてる。
万引きされたこと以上に、普通に会話してた奴が盗んでいった(というか盗む前提で油断させるため話しかけてきてた)ことが相当に腹立たしく、ショックだった。
そしてさらによく見ると、切り取られた防犯タグと共に買取りまっくすの買取領収書が落ちていた。
「これはどういう意味なんだ。”ここで盗んだ服も売るよん♪”っていう当てつけか?!ウルヨンってことかぁぁぁ〜〜〜〜!!!!!!」
オーナーに電話し報告した結果…
怒りに打ち震える僕は、裸になったマネキンを見つめながらオーナーに電話。盗まれてしまったことを謝罪すると
「なんやそいつ、クソやな。最悪やな。呪われたらええねん!どうせだっさいしょうもない人間や!そのうちバチ当たるってそんなやつ。そいつが悪いんやし、気にせんでええから!そんなことより、花ちゃんは大丈夫か?」
※花ちゃんってのは僕の呼び名
泣くやん。
そんな心遣い、泣くやん。
いや、うっすら泣いたよね。
終わりに
22歳くらいの時ですよ、この出来事。
郊外の暗い場所にある一軒の店で、夜になると他の店は全部しまってるポツーンとしたところ。そんなとこで1人で店番してて、いきなりそんな出来事にあったらいくら男でも不安ですやん。
「犯人戻ってきたらどうしたらええんや?!この店イケるぅぅ!!!ってテンション上がって仲間連れてきたり包丁とか持ってきたらどうしよう?!」
みたいな恐怖感ありまくりだった。
オーナーの優しさに助けられました。
てかね、あんまりブログで汚い言葉は使わないようにしてるけど、これだけは言わせて欲しい。
万引きなんてするやつはクソ。
クソだから万引きするのか、万引きするからクソなのかそんなことはしらんが、とにかくクソ。
便所に流す水がもったいないくらいのクソ。
万引きしたやつの顔?ああ覚えてるよ、
ウンコの裏側みたいな顔だったわ!!!
…取り乱しました。
犯人の顔なんて覚えてません。ただ、盗られたのはチャンピオンのスウェットとカーハートのダックジャケット(ヴィンテージ)だった。
現行品でもこの値段なのにあの野郎……